リクエストがあったので書いてみました。 うちの峰と清良は結婚しています。(勝手に) この「Breath」は以前書いた「Sign」の続編というか完結版ですかね?「Breath」だけ読んでも内容が分かるようになっています。 「アネモネ」ともちょっぴりリンクしてるかな? それでは、「Breath」をどうぞ。 ↓ 「おい。これってどのくらい煮ればいいんだ?」 離乳食なんて言われても、はいそうですか、とすぐに作れるはずが無い。 「舌でつぶせる固さで大丈夫よ。」 舌でつぶせる固さ・・・・・・・。 簡単そうに言うけど、わかんねぇし。 鍋を片手に途方に暮れる真一に、清良は笑いを押し殺していた。 峰夫婦は来仏して2日目、真一のアパルトマンへ訪ねてきた。 「ね、オムツ交換したいんだけど、どこでやればいい?」 オムツ・・・・・・・・。 飯作っている時にその話か。 「どこでもいいよ、もう。」 「千秋君。怒ってる?」 「怒ってない。」 明らかに機嫌が悪いが、半ば諦めたような顔をして答えるから清良はさらに面白がった。 「ハルキちゃん、真一おじさん怖いでちゅね~」 「おじさんじゃねぇーー-!!!!」 二人のやり取りが通じているのか、いないのか、春姫の微笑みは絶えなかった。 きゃっきゃと笑う赤ん坊に、真一の鬼気もそがれる。 「・・・幸せそうだな。」 「あはは。そんな野暮なこと言うんだ。千秋君でも。」 何が悪い。 春姫を抱く清良の腕が左右に揺れ、まるでゆりかごのように見える。 ゆりかごに揺られまどろむ赤ん坊は、さしずめ花びらの上で一休みする妖精のように可愛らしく、そして小さかった。 「私、春姫に出会えてよかった。」 すっかり瞼を閉じた妖精の寝顔を見つめながら、清良は呟く。 「この子に出会えて、私、初めて自分がこの世に生まれてきた意味を知った気がするの。」 意味。 真一にとって、それはあるようで、無いのと同じであるように感じられた。 「千秋君、・・・するものじゃなくて、おちるものなのよ。」 「え?」 「すぐに分かるわ。と言うより、気づかない振りしているだけなのかしら。」 真一は清良の言葉に、ますます訳が分からなくなるが、聞き流すことにした。 落ちる。 どこへ? 堕ちる。 何に? **************************************************** 二人の結婚式は夏だった。 トスカーナの大地は灼熱の太陽に焼かれ、熱気を帯びていた。 三次会が終わる前に、真一はホテルの部屋へ戻った。 軽く頭痛がして、部屋に戻るなりベッドへダイブする。 結婚なんて。 縛ったり縛られたり、そんな契約に何の価値がある。 真一は大の字に突っ伏したまま、がんがんと響く頭で思考を巡らせてみる。 幸せな家庭なんて、知らない。 そんなことをぐるぐると考えているうちに、目の前の視界が陰った。 「真一君?」 のだめはうつ伏せで微塵も動かない真一を、ベッドの脇から心配そうに見下ろしていた。 「大丈夫ですか?」 のだめの問いに、 だいじょうぶじゃない。 と、真一が唇だけで答えた。 ベッドに腰掛け、自分の頭を優しく撫でるその手首を強く掴んで、抱きしめた。 真一の首筋に顔を寄せたのだめは、 「真一君、タバコのにおい・・・」 と、一言だけ漏らした。 熱帯魚。 シーツの上を、ただ本能のままに泳ぐ。 人間なんて、高ぶる感情を抑圧の鎖で締め上げて、いつしかその欲望さえ飼いならす。 欲望を理性というオブラートで包み隠して。 快楽が天まで昇ったかと思えば、 気づいた瞬間、現実という奈落へ突き落とされる。 それなのに、そのはずなのに、 止まらない衝動を、確かにこの体が感じている。 強く強く抱きしめても、 まるで陽炎のように実体の無いこいつは、ただすり抜けていくだけ。 「・・・・・・清良さん、素敵でしたネ。」 「ああ。」 「のだめ、ブーケ取り損ねました。」 「花なんて、いくらでも買ってやるよ。」 また的外れなことばっかり、とのだめは思ったが言わなかった。 言って、どうにかなるのだろうか。 ******************************************************* 「ま、運命かな。太陽が東から昇って西へ沈むように。」 龍はのだめに商店街を案内され、二人でその帰りに教会へ寄った。 「運命・・・・・・あるんデスかね?やっぱりそういうの。」 平日の教会は閑散としていて、二人の靴音だけが高い天井まで響いていた。 「ま、あっても無くても、それを実感するかしないかの差だろ。」 「はぁ・・・なんだか難しいですけど。」 「のだめにはまだ早いか?」 「がぼん。何ですか、峰くんが上からものを言うとものすごく腹が立ちマス!」 はっはっはっは、と龍が豪快に笑い転げるから、コンクリートの壁に声が反響してこだました。 「幸せだぜ、俺。」 龍が照れもせず、のだめに微笑みかける。 「知ってますヨ。十分すぎるくらい。」 二人は祭壇の前に跪き、両手を組み合わせた。 「のだめ、何祈るんだよ?」 「峰くんに教える義理はありまセン。」 ちぇ、と言いながらも、龍は気にせず自分と自分の家族の分の祈りを神に捧げる。 願い事は、他人に言わないほうが叶うものなんデスよ。 のだめは心の中で、真剣に祈る峰の横顔に語りかけた。 「さ、ハルキちゃんが待ってますヨ。帰りましょう。」 「そうだな。」 落ちていけ、どこへでも。 堕ちてしまえ、どこまでも。 それが、神の意思に背くものだとしても。 fine ******************************************************* 「Sign」は、峰夫妻結婚式の三次会の場面で終わっているんですよね~ その後は、Riccoの中でなんとなくストーリーがこんな風に続くだろうと漠然と考えてはいました。 「Breath」は時間的経過が把握しにくいお話なので、分かりづらかったかですかね?ま、Riccoの書くものは大抵そうなんですけど。はい、申し訳ありません・・・・・・・・・(汗;) Ricco
by poppo1120
| 2006-03-06 16:57
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