イノセンス(後編)

すみません。

lesson87があまりに衝撃的だったので、キーボード打つ手が小刻みに震えています。

誰か、助けて。マジで。


「イノセンス」は前編と後編に分かれています。

前編をお読みになっていない方はこちらから。

イノセンス(前編)

イノセンス(後編)はこちらからどうぞ。





あなたの願い事は、なんですか?




PM;9:20




中庭で夜空を眺め続けること、1時間半。


少女はのだめの方に寄りかかったまま、眠りについていた。



「まるで、《眠れる森の美少女》デスね。」


真一は無言でお姫様を負ぶって、もう一度、星空を見上げた。



願い事。


星頼みのままでいいのか?



「王子様は、お迎えに来てくれますかネ?」


のだめは、真一の背ですやすや眠るお姫様に聞いてみた。








部屋へ戻り、姫をベッドへ寝かせる。


その体はあまりにも華奢で小さいから、真一のベッドがキングサイズに見える。


白いシーツで眠るその姿が、まるで純白の花畑に横たわる妖精のように愛らしい。





ソファーに座るのだめが、なにやら小さなケースをじろじろ見つめていた。


「真一君、これは?」


細いケース、しかし、確かな重みがある。



「マルレの倉庫から拝借してきたんだ。」



《ダフニスとクロエ》。



あの音色が頭から離れない。




「のだめも、フルート聴いてみたかったデス。」

「ま、寝ちまったからお預けだな。」



赤いソファーに寄り添いながら、二人は同時に彼女のフルートを吹く姿を想像していた。



「一曲、弾きまセンか?」

「ここでガンガン鳴らしたら、起きちゃうだろ。」

「小さな音で弾きますから、ネ?」



のだめが甘える。


真一は、今夜はその甘えが心地よくて願いを叶えてやる気になった。






ヴォーン・ウィリアムズ 《グリーン・スリーヴズによる幻想曲》



久々の真一のヴァイオリンは、部屋の隅々まで響き渡る。

それに答えるように、のだめのピアノが小さく、しかし美しい音色を放つ。



"こんなにも愛し
 
 幸せを感じていたのに
 
 グリーンスリーヴズこそ 生きがい

 グリーンスリーヴズこそ 喜び

 グリーンスリーヴズは 僕の支え

 
 彼女以外に誰がいるだろう"







すると、


「あぁっ?!」



いつの間にか、少女が部屋の隅からこちらを覗き見ていた。



「ほら、やっぱり起こしちゃったじゃないか。」

「あまりにきれいな歌だから、混ざりたくなっちゃったんですよネ?」



少女はソファーの上に小さなケースを見つけ、おもむろに楽器を組み立て始めた。

シリコンクロスで楽器を包み、グロスを塗るその手際のよさに圧倒される。


シルバーのフルートが、きらりと輝く。




さあ、どうぞ。


と言わんばかりに、少女は真一の隣に立って楽器を構えた。



驚く真一をよそ目に、のだめは



「さぁ、準備が整ったようですネ。黄金トリオの出番デス!」



と言って、笑顔で合図した。






響く鼓動のリズム。



3人の心の周波数が重なる一点に、究極の音が生まれる。

世界の果てまでも届きそうな美しいフルートのロングトーン。

ピアノが奏でるアルペジオは、金のハープの響き。



ヴァイオリンの弓が、果てしない愛と悲しみを奏でる。

幼いからだから生まれるとは到底想像できない、その息使いに導かれるメロディー。


フルートが悠久の時間を表すならば、旋律を引き継ぐ真一の音は、その時を生きる生き物たちの悲哀と愛を歌う。




"僕はいつも あなたのそばにいた

 
 あなたの望みを かなえるため
 
 生活も財産も 投げうった


 あなたへの愛のために"




この世界は、


愛に満ちている。






演奏終了後、まもなく少女とのだめは一緒に寝てしまった。


真一はシャワーを浴びて、一人ソファーで眠ることにした。



一人で横たわるとソファーは異常に冷たく感じたが、真一は気にしなかった。


体中が、幸せな温度で満ちていたから。





真一は夢を見た。


夜空に降る星に、あの少女が乗っている。




どこへ行くの?




と聞いてみたが、返事はなかった。




真一は夢の中で、変な夢だな、と思った。




どこまでが夢で、どこから現実なのか。

何が幻で、何が真実なのか。     



運命を告げる、星の化身との出会い。




この出会いが何を意味するか、二人はまだ知らなかった。



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真一は、何かに引きずり出されるように夢から覚めた。

暗闇の中、隣に白い影がたたずんでいる。


「おしっこ。」

「・・・は?」



トイレまで姫のお供。


こんな夜中に、俺はいったい何をやってるんだ?



ため息を飲み込んで、

「ちゃんと手は洗ったか?」

と、少女に確認する。



小さな手を引くナイトは、ベッドに辿り着く。


真一はベッドの脇に腰掛けて、眠れる二人の姫君の寝顔を、じっと、眺めてみる。



話下手な分、音を奏でて気持ちを表現する。


この二人は、似たもの同士なのか?



そんなことを考えているうちに、真一も夢の世界へと帰っていった。





川の字に並ぶ3つの星。



部屋は真っ暗なはずなのに、星たちだけはわずかに光を放っていた。








「あぁ~?!」

のだめの絶叫に、真一の体がビクッとした。



少女が、いない。


どこへ消えてしまったのか。



真一は重い体を起こして、ふと、枕元に小さな紙切れを見つける。




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 じかんがきたから かえるね。

 おほしさまに またふたりにあえますようにって

 おねがいしたよ。また あえるよね?


                    ねね
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「ネネちゃんって名前だったんですネ。」


いや、そんなことより。



じかん?かえる?



彼女はいったい、なんだったんだ?





「なんだか、のだめたちは夢を見ていたんでショウか?」




夢でもいい。

夢の中で、また会えるなら。



しかし、俺たちは不確かな今を生きている。









TiTiTiTiTi…




AM;7:45。





太陽が、目覚めろと燦々と輝く。



「おい、お前学校は?」




「ふぉお…今何時デスか?」








ダル・セーニョ

《いつもの朝に、戻る。》






真一は、カーテンを開いて、窓を全開にした。

さわやかな風が、朝の匂いを一気に部屋へ運んでくる。



「朝ごはん、結構デス!」

「だめ。ちょっとでいいから食っていけ。」







お忘れ物は、ありませんか?





「行ってきマス!」


ホップ、ステップで玄関を飛び出そうとすると、


真一に力強く腕をつかまれ、部屋の中に引き戻される。




「のだめ、ごはん食べ・・・」





?!!!






「行ってらっしゃい。」







二人のお姫様との再会は、まだ先のお話。



                                       
                                                fine
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イノセンス、いかがだったでしょうか?


解釈は、読んでくださった皆さんにお任せしようかと思います。

RiccoのSSはどれも単発ですが、横なり、縦なりの線でストーリーや設定が繋がっています。面倒だとは思いますが、興味があったら他のSSの中にキーワードを見つけていただけるとうれしいです。

しかし、ほんと最近Riccoの書く話はわけわかりませんね。しょぼん。

Ricco
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by poppo1120 | 2006-02-25 15:11 | SS
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