neverland

千秋の過去ってあまり詳しくは語られていませんが、きっとたくさんのストーリーが隠されているような気がします。

あえて、今後も語られないかもしれませんね・・・


それでは、「neverland」始まります。




探しものは、何?







「真一君、子ども4人目ですヨ?」


「お前なんかまだ、結婚もして無いじゃん。」



真一が突然、人生ゲームがしたいなんて言うものだから、のだめは慌てて部屋からゲーム機を引っ張り出してきた。


「それになんだよ、職業『人間国宝』って。意味分からないし。」

「これはスペシャルジョブなんデスってば。あ、ハートマス!!」



迷路のように入り組んだボード。

ルーレットで出た目の数だけ進む。



そんな人生、現実にはない。




「のだめはさっさとゴールして、夢の年金生活デス!!」


この先どれだけ進めるか、何が起きるかなんて、ルーレット一つじゃ決められない。




「・・・・・・・最後の賭け?」

「自分の財産を賭けて、大逆転のラストチャンス!!」



やるだけやってみないと、掴めるものも掴めない?




「あ・・・。」




『最後の賭けに失敗。開拓地へ飛ばされる。』




僕たちは音楽で繋がっている。




先生、俺はまだ、開拓地の出口が見つかりません。


パリへ来てようやく、扉を開いたと思っていたのに、



俺はまだ、その扉にすら辿り着けていなかった。




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「どうした、彼女と喧嘩でもした?」

「喧嘩なんて、してませんけど。」


長田がにやけながら言うものだから、真一は余計機嫌が悪くなる。



アパルトマンの屋根裏部屋。


何も用はないのだけれど、不思議と気がついたら来てしまう。




自分の部屋とは全然違う、この空間。


何故こんなに居心地が良いのか、真一には分からない。



「なんだか気に入られちゃったみたいだな。君にも。」

長田は、ティーポットにお湯を注いで茶葉を蒸らす。




君のお父さんも、よくここへ遊びに来たんだ。




長田の言葉を思い出す。



あいつ、なんで。

俺達のところには、滅多に帰ってこなかったくせに。



狭い窓。

屋根裏から覗ける外の景色。


いつもより空が近く感じる。


少しだけ、空に手が届くかもしれないと思う。




「そういえば、屋根裏って他にも人が住んでるんですよね?」

「僕の両隣には人がいるはずだけど…」

長田は続ける。


「でも、もしかしたら空いている部屋もあるんじゃないかな?屋根裏に住みたいなんてセンスの良い学生は、そう多くないと思うし。」




何故だろう。


妙だな。

屋根裏に興味がわくなんて。




「アンナ!!」


真一はあいさつも無しに長田の部屋を飛び出すと、そう叫んだ。



「おいおい、一口くらい飲んでいけよ。」


長田は湯気が上がる湯飲みを両手に、そう呟いた。





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暗いし。

しかもなんだ、この空気の悪さは?


アンナに鍵を借りて、一つだけ誰にも貸していないという屋根裏部屋に踏み入れる。


ほこりっぽい。

鼻がむずむずする。

そんなことを考えている間に、蜘蛛の巣に捕まった。



・・・・・・・汚ねぇ。



真一は額についた蜘蛛の糸を右手で払いながら、何故こんなところに来てしまったのかと少し後悔した。


閉め切られた小さい窓はほこりと水垢で汚れ、外の景色がぼやける。

もちろん、窓にはカーテンなんて着いていない。


屋根裏だけあって、天井が低い。

真一が背伸びすれば、天井の柱にぶら下がることもできるくらいの高さしかない。



部屋の中心に立って、薄汚れたこの部屋を見渡す。




ふと、部屋の奥、壁の片隅に黒い物体を見つけた。


なんだ?



恐る恐る近づいて見ると、黒いと思っていたその物体は、ほこりにまみれて真っ白だった。




この形・・・・・・・・・・・ヴァイオリンケースか?!



小さなハードケースは、壁にもたれて一人たたずんでいた。

おそらく、子供用だろう。


誰かの忘れ物だろうか?


その程度にしか考えていなかった真一の目に、赤いリボンが見えた。


ケースにリボンが付いている。


汚れたヴァイオリンケースのほこりを払いながら、そっと持ち上げる。


確かな重み。

中には確実にヴァイオリンが眠っているだろう。



なんの衝動なのか、真一にも分からなかった。

ケースの中からヴァイオリンを取り出す。


ケースの汚さからは想像もできないような、美しいヴァイオリンが顔を覗かせた。


弦も錆びていないし、弓もきれいに張ってある。



左手にヴァイオリンを持って構えてみた。


・・・・・・・小さい。



真一は思わず笑った。



子供用のヴァイオリン。

こんなに小さかったんだな。



この肩、この腕、この手。

この小さなヴァイオリンと比べると、まるで巨人の持ち物のような気がした。




すると、

ガサッ。


突然、背後に何者かの気配を感じて、真一は背筋が凍った。

後ろを振り返る。



小さい黒髪の子ども。

こちらを見上げている。


白いシャツに黒いベスト。

白い肌に・・・瞳には涙が見える。





『ねぇ、今日は母さんがごちそうよういしてくれるって。』



真一に向かって、少年は、消え入りそうな声で話しかけた。




『ベルギーのコンクールでゆうしょうしたお祝いだって・・・・・・』



呆気にとられる真一は、黙って「彼」の話を聞いていた。

真一の首筋に、冷や汗らしきものが流れた。






『・・・・・・・・・父さん、かえってきてくれるよね?』






?????!!!!!




誰だ、こいつ?!



真一の体は硬直していたが、突然泣き出した空に気づき、正気を取り戻す。


外は雨が降っている。

大きな雨粒が、「二人」の心をそっと洗い流してくれるのように。




もう一度窓の外に向いていた視線を「彼」に戻す。

もう、「彼」はいなかった。





無性に切なくて、やるせなくて、真一は無心で小さなヴァイオリンを弾き出した。

弦と弦の間が狭くて、太い指じゃ押さえにくい。

しかし、真一にとってそんなことは関係なかった。



ただ、ヴァイオリンが弾きたかった。





「あの部屋、人は住んでいないけど持ち主はいるのよ。」


真一はアンナの言葉を思い出していた。






「真一君が・・・・・泣いてる。」


屋根裏に響くヴァイオリンの音色。

のだめにも、届いていた。




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「みーつけた。」


のだめが迎えに来た。



「屋根の上ならぬ、《屋根裏のヴァイオリン弾き》、デスね。」



真一は、呆然と立ち尽くしていた。

左手にはヴァイオリン、右手には弓を握って。




「さ、帰りまショ。」

彼女はそう言うと、真一の懐に飛び込んできた。




「真一君には、ちゃんと帰る場所がありますヨ。」



両手が塞がっていて、抱きしめられなかった。


だが確かに、彼女の温かさを感じた。



帰ろう。

その温もりが待つ場所へ。







二人で廊下を歩いていると、長田が部屋の前で待っていた。



彼の手には1冊のスケッチブック。



「真一のヴァイオリンを聞いてたら、つい描きたくなっちゃって。」


孔雀だけはやめて欲しい。

そう思いながら彼のスケッチブックを覗いた。



「・・・・・・・鍵、デスか?」

のだめが答える。


真っ白なページには、きれいな鍵の絵が描かれてあった。





「君の扉はもう、見つかったのかい?」






甘えられるほど、優しい思い出なんてない。


でも、甘えられる今日があるなら。





扉を開けられるかどうかは、この手に懸かっている。





                                             fine

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なんか、暗い話になってしまいましたかね・・・
しかし、真一の過去を思うと、なんだか泣けてきます。

読んでくださっている方の中には私と同じ思いの方もいらっしゃいますかね?

ちょっぴりファンタジーに仕上げてみました。

Ricco
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by poppo1120 | 2006-02-20 12:41 | SS
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