with you ~a time capsule~



緋色さん、「神秘の詩」5万hit記念に贈ります。おめでと~!!

そして、色々ご迷惑おかけしました~m(--)m





それでは、「with you ~a time capsule~」始まります。




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To;真一君


この手紙を読む頃には、お互いどんな毎日を過ごしていマスかね?

のだめは・・・今まで真一君から数え切れないほどの幸せを貰いました。

その幸せを一つ一つ、思い出しながらこの手紙を書いていマス。

ほんとに・・・・・・・感謝したくても言葉になりまセン。


この手紙は、のだめにとって新たな決意が込められていますヨ。むんっ!!


昨日まで貰った幸せの分・・・今日からはのだめが真一君に幸せをあげマス。

だから、のだめより早死にしないでくだサイ。

幸せを全部、その手に渡せる時まで。約束ですヨ??

                                          From;のだめ

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「掘るもの、見つかりませんネェ~」

「当たり前だ。普通、来る前に準備しとくだろ。」



ラ岬から吹き上げる風が、二人の間を通り抜ける。


空と海とを微かながら、しかし、しっかりと隔てている水平線が見渡せるこの丘。

水平線が無ければ、きっとこの空と海は溶け合ってしまうだろう。

それほどに、空も海も、青い。



「じゃあ、のだめのこの手で・・・」

のだめは真一に両手を見せる。


「・・・頼むから、素手で掘るのだけはやめてくれ。」


こぼれ落ちそうな夢の雫を拾い集めてくれた、その両手。

汚れたのを見たくない。



真一は、腰に両手を当てながら長いため息をつく。


のだめは、雑草と蟻以外何もないこの丘をそこら中見渡しながら、

「あ、あたっ!!先輩、これで掘りまショ!!!」

と、何本かの小枝を拾い上げた。


なんの木の枝だろう。

箸くらいの太さしかないこの枝で、一体どれくらい掘れるのかわからない。



ほんとにやるのか?

のだめにそんなことを聞く余地も無かった。



かがんで地べたをつつきだすのだめのワンピースの裾は、すでに土色に変わっている。

諦めた真一はのだめの向かい側にかがんで、素手で土を掘り出す。



のだめには、素手はだめだと言ったのに。

そんなことを真一に言い返している暇は無かった。



二人の姿はまるで、公園の砂場でお城を作る子どもの様にも見える。

頭上を往来するカモメの集団にも、まったく気がつかない。



あまりにも真剣なのだめの顔を見て、真一は聞こえないように小さく笑った。


土いじりなんて、やったことあったっけ?


真一は、幼かった頃の自分を思い返すが、こんなに土で真っ黒になった自分の手を初めてみる。

いつもこの手に持っていたのは、スコップではなく、ヴァイオリンだった。




「よし、これくらいでどうですかネ?」

のだめの額には、汗が滴る。


「穴、浅過ぎないか?」

真一の首筋にも、光るものが流れた。



「大丈夫ですヨ。あまり大きくないデスから!」

のだめはそう答えると、鞄から小さなアルミ缶を取り出す。



空があまりにも青いから、吸い込まれそうになる。




「で、先輩。何を入れるんデスか??」

「その前に、お前はどうするんだよ。」


そう聞かれたのだめは、ワンピースのポケットから黄色の封筒を取り出す。

「のだめは、コレです。」

そう言いながら、アルミ缶の中に封筒を入れる。



真一は黙ってアルミ缶を受け取る。

土色になった手で受け取るから、アルミ缶は少し汚れた。



もう片方の手で、いつの間にか脱いだ黒のジャケットを拾い上げると、その内ポケットから見覚えのあるものを取り出す。



「真一君・・・・・・それ。」




あの日の、懐中時計。




「フランスに持ってきていたんデスか?」

驚いたのだめの顔を見ながら、真一は答える。


「ずっと、持ち歩いてたけど。」

平然と答える真一を見て、のだめは余計目を丸くする。




「埋めちゃって、いいンですか?それ。」



真一は目を閉じる。


この時計に刻まれた、あの日の記憶。



「いいんだ。手元を離れても、この時計は立ち止まらずに俺たちの時間を刻み続けてくれるよ、きっと。」

そう言って瞼を開けると、汚れたアルミ缶に懐中時計を入れた。


「そデスね。きっとこの時計は止まりまセン。」


のだめは真一に蓋を渡す。

二人の指先が、軽く触れ合った。


「のだめ、何か目印になる石を探してきマス!!」

そういって駆け出すのだめの背中を見送りながら、真一はポケットからもう一つ何かを取り出して、のだめに見つからないように缶に入れて、蓋を閉める。



息を切らして帰って来たのだめと、アルミ缶を埋めた。

缶に被せた土はやわらかくて、温かくて、その感触が真一には気持ち良かった。


「いつ、掘り返しに来ましょうかネ?」

「埋めた直後から、掘り返す話かよ。」

「え~だって、楽しみじゃないデスか。宝箱を開けるみたいで。」



宝箱。




「・・・・・・・そうだな。俺たちがまた、新しい時間の針を動かしたくなった時にまた来よう。」



そう言って真一は、彼女と、彼女との思い出を抱きしめる。





一つに重なりあう影を、ただ太陽だけが見ていた。






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フランス・ブルターニュ。



久々のオフ、せわしないパリを離れて、田舎の方に出かけたくなった。



マルレの定期公演のことを考えると、気が沈む。

落ち込みだすと、あの時のボレロのリズムが延々と耳奥に鳴り響いて、どうしようもない気分に陥る。



思考の螺旋。

考えはぐるぐると廻って、同じところに辿り着く。


答えなんて、無い。

ただ分かるのは、逃げ道なんて存在しないということだけ。




重い腰を上げて、のだめに声をかける。



「出掛けよう。」





モン・サン・ミッシェル。

世界遺産と陸をつなぐ一本道沿いに建つホテルに、運良く予約が取れた。



シーズンを終えた観光地は閑散とし、真一にはちょうど良かった。


のだめは

「クレープ、クレープ♪」

と自作の歌を披露しながら、真一の背中に続く。





こういう時、こいつは何も聞かないんだよな。



のだめは、真一が急に出掛けたいといっても理由を聞かない。

詮索しないというか、興味が無いというか、とにかく真一にとっては都合が良いのかもしれない。



モン・サン・ミシェルは大修道院。

その姿はまるで地上に降りた天空の城そのものにも思える。

聖地を訪ねても、のだめの関心はもっぱら土産もの屋やレストランだった。



ふと、のだめの視線が土産物屋にあるポストカードに留まった。

「真一君、タイムカプセルしませんか?」


突然、何を言い出すかと思えば。


「なに、それ。」

「ぼへっ!!真一君、どんなしらけた子ども時代を過ごしてきたんですか?」


うるさい。



「まぁ、とにかく・・・あ、おじさん。これ二枚ください!!」


結局、買うのか。




「ホテルに戻ったら、教えてあげますヨ。」



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ホテルはツインで、のだめはがっかりした。


「しょうがないだろ。急に予約入れたんだし。」


のだめは渋々頷くと、昼間買ったポストカードをベッドの上に2枚、並べた。



「のだめ、小学生の時タイムカプセル埋めるのが流行って・・・」

のだめは続ける。

「のだめはハマリすぎて何十個も埋めたんデス。」


埋める?何を?


「真一君、今『何を埋めるんだ?』とか考えてましたネ?」


悪かったな。


「自分の宝物とか、未来の自分宛てに書いた手紙とかを箱に詰めて、埋めるんデス。」

「ふーん。埋めてどうするんだ?」



寝転ぶのだめの隣に腰掛けて、ポストカードを手に取る。


「10年後とか、時間を決めて掘り返しに行く約束をするんデス。でものだめ、埋めすぎて分からなくなちゃって、そしたらいつの間にか忘れて・・・」

のだめらしいな。


「掘り返すの、すごく楽しみにしているはずなのに、今考えると惜しい気がしマス。」

「どーせ、ごろ太とか入れたんだろ。」

「宝物は、宝物デス!!」



思い出を閉じ込めて、それからどうする?



枕もとのランプが、二人の顔をオレンジ色に染める。


「真一君は、未来ののだめに手紙を書いてくだサイね。」

「何で俺まで・・・」

「真一君の、子ども時代を取り戻すために!!」


いいよ、別に。

そう言おうとしたが、のだめは聞く気がなさそうだったからやめた。


のだめはすぐにポストカードに何かを書き込み始めたが、どこか夢心地にまどろみ始める。


「風呂くらい入って、寝れば?」


どうせ、俺の言葉は届いてないだろう。

すぐに寝息が聞こえる。




うつ伏せ・・・窒息するぞ。


汚れたワンピースのまま夢路に入るのだめの体を抱えて、仰向けに戻す。





タイムカプセル・・・・・・





俺の、何を。


俺の、どんな想いを詰めればいい?




のだめの頬に触れて、考える。




もう一度、ポストカードを手にとって、デスクへ向かった。


楽譜以外に、ペンを持って向かうのはいつ以来だろう。







俺の止まっていた時間の針を、もう一度動かしてくれた大切なもの。

いつもポケットにしまってある。




針の動きを目で追うと、今、確かに俺の時間は未来に向かって動いていると気づかされる。












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のだめへ

あー・・・・・・・。こういうとき、普通、何書くんだ?

まぁ、いいか。


・・・しっかり飯食ってるか?ちゃんと部屋、綺麗にしているだろうな?



ピアノは、相変わらず弾いているのか?



・・・・・・そうだな、考えれば、今まで俺はお前に"ちゃんと"とか、"しっかり"とか言い過ぎてた。

ごめん。


これから先、ずっと変わらないお前でいてくれれば良いと思う。

それだけ。


                                                 真一
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夜はいつでも、明日来る朝のために更けていく。





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"マーマ"

「何デスか?ネネちゃん、今日は甘えんぼさんですネ~」


差し伸べられる、温かい手。


「ほら、おいで。」

"パァ・・・パ"


「寧音、それ、しっかり持ってろよ。大事なものだからな。」

「大丈夫デス!!のだめの子だから!!!落としたりしませんヨ~」


「バーカ・・・・・・・俺の子だ。」



ブルターニュの丘。




太陽は、新たに3つの影を見つける。




                                                fine
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なんだか、甘くないね。だめだ、私。私が甘い話とか狙っちゃだめでした。

千秋とのだめ、この先も幸せを分かち合っていって欲しいです。


Ricco
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by poppo1120 | 2006-02-15 20:59 | 捧げものSS
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