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サボテン-始まりの詩-

ハッピー・バレンタインtoくろきん。
黒木君大好きです。黒木君のオーボエも大好きです。

千秋にはのだめがいるから、私は潔く身を引きます・・・。

くろきん、ラーヴ!!

全国のくろきんファンに勝手に捧げます。

それでは、「サボテン-始まりの詩-」をどうぞ。





"きみは、わが魂、わが心、

 
きみは、わがよろこび、わが悲しみ、


きみは、わが世界・・・・・・"









新学期が、秋。

日本では、草花が芽を出す春がすべての「始まり」にふさわしいとされている。

だから、新学期は春。



少々ではあるが、何か釈然としない思いがある。

長い冬から目覚めた多くの生き物たちが、再びその命を輝かす季節。



そんな春が、僕は好きなのに。






「ねぇ、ヤス。聞いてる??」

コンセルヴァトワール、レッスンが終わったリュカに腕を捕まれる。


「あ、えと・・・これ、恵ちゃんに渡せばいいんだっけ?」

「も~。ヤスはボーとしちゃって。僕、門限が6時だから、もう帰らなきゃ。」

リュカのふくよかで柔らかそうな頬が、ぷー、っと風船みたいに膨らむ。


門限が6時。


ここには、世界中から音楽の極みを求めて、数え切れないくらいの音楽に生きる人々が集まる。

たった12歳のリュカ。

ただし、ここではオトナもコドモも関係ない。



人は、いつからコドモからオトナと呼ばれるようになるのか。



黒木は、リュカからレッスン室に忘れていったのだめの楽譜を受け取り、鞄にしまう。



「ちゃんと届けるよ。男同士の約束。」

そういって指切りしたこの小指は、紛れも無く「オトナ」のものではなかった。


リュカの背中を見送る。




リサイタル以来だな。





黒木の心に、あの時の彼女の音が鮮明によみがえる。



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「すみません~。わざわざ・・・」


のだめは千秋の部屋にいた。



「いや、男同士の約束だからね。」

そう答えると、

「じゃ、ちゃんと渡したから。」

といって、アパルトマンを去ろうとする。

背中を向けた黒木の腕を、すかさずのだめが捕らえる。




リュカの手と、同じだ。




「ちょ、ちょっと!!黒木君、お茶ぐらい出しますヨ~!!!」


気を使わなくてよいのに。

そう思いつつ、彼女の焦った顔を見て、温かい緑茶を準備してもらう気になった。




「新学期、始まっちゃいましたネェ~。」


黒い瞳、茶色い髪。



「のだめも2年目、もうベテランですヨ!!」


白い肌、細い首。



「ささ、粗茶デスが・・・」


・・・・・・大きくて、きれいな手。



真っ赤なソファー。

いつも二人で座ってるのだろうか。



「僕も、お休み気分からさっさと切り替えて練習しなきゃな。」

「黒木君は、これからどうするんデスか?」



僕と彼女との距離。

たったテーブル一つ隔てているだけなのに、こんなに遠い。




「マルレのオーディション、いくら人手が足りないからってそんなに甘くはないと思うから。」

「そか、黒木君、マルレ受けるんでしたネ。毎日練習ばっかり?」


湯のみ温かさが、両手に伝わる。


「オーディションがあるにしろ無いにしろ、練習は毎日やってるからね。」


僕のオーボエ。

寝る時以外、手放すことなんて無い。


「のだめも・・・・・・進化しなきゃ。」

彼女が真顔で言うものだから、黒木は目を丸くする。


「進化?一体、何に進化するつもりなの?」

笑をこらえながら、黒木は問う。


「それはモチロン!・・・・・・今は秘密ですヨ!!」



なーんだ。

せっかく聞いてみたのに。



「一曲、いかがデスか?ムッシュー黒木??」

「いいね。特別なヤツを。」



ピアノ椅子に座ると、彼女は大きく、深呼吸をした。



「のだめリサイタル、inサン・ジェルマン!!」





自由な音。

音符に羽が生えているみたいだ。

スタッカットに乗って、跳ねたり、飛んだり。




・・・・・・胸が、熱い。



こんなにも、この心が熱を帯びることがあるなんて。



ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第二十三番へ短調 《熱情》



「熱情」・・・・・・そんなもの、今まで知らなかった。





君が、教えてくれた。




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「黒木君、お腹空きまセンか?」


さっきの演奏で、お腹いっぱい。



「平気だよ。そろそろ帰らないと。」

「もうすぐ先輩も帰ってきますヨ~?」




外はもう暗い。

アパルトマンは、明日を夢見て練習する学生たちの音で溢れかえっている。


「あ、ターニャのピアノ♪」

のだめはそう言うと、窓を開ける。




私には無理。

耐え切れない。



あの時の言葉を、思い出す。



「恵ちゃん。」

「ハイッ?」


振り向いた彼女の笑顔が、あまりに愛しい。



「ピアノ弾いていて、淋しいと感じることってあったりする?」

突然の質問に、のだめは考え込む。


彼女なら、なんて答えるだろう。




「ない・・・・・・デスね。むしろ、ピアノ弾いてる方が淋しくないデス。」

彼女は続ける。


「ピアノを弾いていると、誰かと会話しているような、手を繋いでいるような・・・・・・」

黒木は黙って聞いている。




「たとえ一人で弾いていても、ピアノがのだめとみんなを結んでいる気がするンです。」


「結んでいる・・・・・・」




「ピアノが無かったら、ここにいるみんなとも出会っていなかったかもしれまセン。」


月の光は、こんなにも君をきれいに照らす。


「きっと、のだめがピアノに出会ってから、その弦はずっとずっと色々な人とのだめを繋いできてくれたから。」




僕も、その中の一人?


聞いてみたくなったが、聞くだけ意味の無いことだと気づく。




すべての出会いに感謝しよう。


ずっと、繋がっていたい。



側にいること、

その温もりに触れること、

その肌を抱きしめること。






たとえ、それが出来ないとしても。








                                                   fine
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くろきんの恋を見ていると、色々な思いがこみ上げてきます。
感情移入しすぎですかね?

冒頭の詞は、シューマンの「ミルテの花」という歌を引用させていただきました。

昔の人は、ずいぶんストレートに愛を表現できたんですネェ~


くろきんの幸せを願います。


Ricco
by poppo1120 | 2006-02-13 15:46 | SS
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