シナモン

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さて、「シナモン」は3話連載のラストです。
うまく話がまとまるかは風まかせ~♪

それでは・・・・・・




ピアノの楽譜は空模様と同じだと、のだめは思う。




真っ青な空、白い雲の音階を駆け上がって太陽の光をつかもう。


雨が降れば音の雫が地上に降り注ぎ、一粒の雫がいつかは旋律の大海原になる。

メロディーは音符の波にさらわれて、やがて太陽の光を浴びて水蒸気になって。


7色に輝く虹のスラーが向こう岸まで架かったら、一気に助走をつけて走り出したくなる。


夕暮れのハーモニーに心打たれたら、夜空にぶら下がるきらきら星の輝きを拾い集めに。




空のように色々な表情を見せるメロディーたちに、のだめは自分の想いを乗せる。





のだめの控え室には窓がない。

息苦しくて、胸が詰まる。


空が見たい、と思う。

優しい風に髪を撫でてもらって、まぶしい太陽のキスを浴びたい。





リハーサルといえども、のだめの緊張の糸は、ぴん、と張り詰めたままである。


真一は今、ステージの上で打ち合わせをしているのだろう。


声が聞きたい。

でも、甘えてばかりはいられない。



私とピアノ。



ピアノがこの世界から消えてしまったら、私はどこへ行けばいい?


この腕は、手は、指は。


この足は、耳は、体は。




失敗は許されない。




今日という日のために、私はあなたと出会った。




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週末、急にドライブに行きたいなんて言うから、慌てて車のキーを探す。



最近、机の上は・・・・・・・・・いや、部屋のどこからどこまでも散らかっている。

探しモノ一つ、見つけにくい部屋になってしまった。


公演が近づくと、大量のスコアもなりふり構わずフローリングに寝そべっている。

失敗したことがないのだめのおにぎりも、ただ干からびて固まるだけ。



ま、そんなことを気にしている暇はない。


のだめがランチボックスをぶらぶらと持って、今か今かと待ちわびている。



「よし、行くか。」






千秋は珍しく遠出する気になった。

のだめが海が見たいと言うから、渋々頷く。


フランス第二の都市、リヨンを経由して途中シャガール美術館に寄り道。

・・・・・・といきたい所だったが、結局飛行機に乗る羽目になった。



今回は特別。



千秋は自分に言い聞かせる。




次は南仏コート・ダ・ジュールの街ニース。


地中海に面した街、イタリアとモナコの国境からすぐである。


海岸通、プロムナード・デ・ザングレを歩けば、コバルトブルーの水面が見える。



「ふおぉ・・・砂浜、じゃなくて小石なんデスね。」



のだめが物珍しそうにビーチを眺める。




・・・・・・疲れた。




今日の移動距離は半端じゃない。

パリからコート・ダ・ジュール空港まで1時間。


少々リッチな遠出になった。




「そだ、お弁当食べまショ~!!」

途中買ったビニールシートを敷いて、並んで座る。





「はぁ~・・・・もうそろそろ夕暮れですね。」

「そりゃそうだろ。お前、出かけたいって言い出したの何時だ?」

「それは・・・・でも、のだめ朝寝坊だったし。」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




海の音だけが聞こえる。






沈黙が二人を飲み込む。


こいつなりに、気が滅入ってるんだよな。



本番まで後4日。

リハーサルはゲネプロ合わせて後2回だけとなった。





地中海に沈む夕日が、のだめの瞳を紅く照らす。




「・・・・・・・・真一くん。」

のだめが口を開く。


「もし・・・・・のだめがもうピアノを弾かないと言ったら、のだめはのだめじゃなくなりマスか?」

唐突な質問に、千秋は返す言葉を必死に探す。




「・・・・・・・冗談デス!!今のは無かったことにしてくだサイ。」




無かったことに出来るはずがない。





「最近、ピアノがあまりにものだめの心を映すから、少し怖くなっただけデス。」


「心・・・・・・」


千秋は考え込む。

その間にも、夕日はどんどん海に飲まれていく。




「良いんデス。この不安は、本番に晴らします。」

「・・・・・・・・・。」



これは、のだめの問題なのか。

俺とのだめの問題なのか。




考えは四方八方を飛んで、空回るだけだった。




「とにかく、今夜はどこか泊まって、明日パリに戻ろう。」

「むきゃ~っ♪真一くん、今日はなんだか太っ腹ですネ?」

「俺は、いつも気前いいよ。」





二人は夜の闇に連れ去られてしまわないように、その手を握り合った。




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朝に飲んだ紅茶は、すごく甘い、いいにおい。



でも時々、ちょっぴり苦い。






のだめは部屋の壁一面に広がる窓から、空を見上げていた。

少し窓を開けてみると、海のにおいがした。




千秋はまだ寝ている。

丸まってシーツをぐしゃぐしゃにしているその姿が愛しくて、のだめはいつも癒されている。





「きっと、大丈夫デス。」




聞こえないような小さな声で、ニースの空に向かって呟いた。








                                                fine






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終わりました。
こんなんで、良いのでしょうか?

一応、「カナリア」「アネモネ」「シナモン」の3話は、のだめを中心に書いています。


なんだか、私が書くのだめはテンション低い気が・・・・・・・・・・・・。






ゴールデン・ペア、早く見たいような、まだ取っておきたいような。

それでは、3話読んでくださった方、この話だけ読んでくださった方、皆々様。

感想などございましたらご気軽に!


それでは。

Ricco
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by poppo1120 | 2006-02-11 23:30 | SS連載
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