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設置当初、しばらく拍手ゼロだったらWeb拍手ボタンを撤収しようと考えていましたが、とんでもありませんでした。みなさんの温かいお心遣いに感謝。 さて、「シナモン」は3話連載のラストです。 うまく話がまとまるかは風まかせ~♪ それでは・・・・・・ ↓ ピアノの楽譜は空模様と同じだと、のだめは思う。 真っ青な空、白い雲の音階を駆け上がって太陽の光をつかもう。 雨が降れば音の雫が地上に降り注ぎ、一粒の雫がいつかは旋律の大海原になる。 メロディーは音符の波にさらわれて、やがて太陽の光を浴びて水蒸気になって。 7色に輝く虹のスラーが向こう岸まで架かったら、一気に助走をつけて走り出したくなる。 夕暮れのハーモニーに心打たれたら、夜空にぶら下がるきらきら星の輝きを拾い集めに。 空のように色々な表情を見せるメロディーたちに、のだめは自分の想いを乗せる。 のだめの控え室には窓がない。 息苦しくて、胸が詰まる。 空が見たい、と思う。 優しい風に髪を撫でてもらって、まぶしい太陽のキスを浴びたい。 リハーサルといえども、のだめの緊張の糸は、ぴん、と張り詰めたままである。 真一は今、ステージの上で打ち合わせをしているのだろう。 声が聞きたい。 でも、甘えてばかりはいられない。 私とピアノ。 ピアノがこの世界から消えてしまったら、私はどこへ行けばいい? この腕は、手は、指は。 この足は、耳は、体は。 失敗は許されない。 今日という日のために、私はあなたと出会った。 *********************************************************** 週末、急にドライブに行きたいなんて言うから、慌てて車のキーを探す。 最近、机の上は・・・・・・・・・いや、部屋のどこからどこまでも散らかっている。 探しモノ一つ、見つけにくい部屋になってしまった。 公演が近づくと、大量のスコアもなりふり構わずフローリングに寝そべっている。 失敗したことがないのだめのおにぎりも、ただ干からびて固まるだけ。 ま、そんなことを気にしている暇はない。 のだめがランチボックスをぶらぶらと持って、今か今かと待ちわびている。 「よし、行くか。」 千秋は珍しく遠出する気になった。 のだめが海が見たいと言うから、渋々頷く。 フランス第二の都市、リヨンを経由して途中シャガール美術館に寄り道。 ・・・・・・といきたい所だったが、結局飛行機に乗る羽目になった。 今回は特別。 千秋は自分に言い聞かせる。 次は南仏コート・ダ・ジュールの街ニース。 地中海に面した街、イタリアとモナコの国境からすぐである。 海岸通、プロムナード・デ・ザングレを歩けば、コバルトブルーの水面が見える。 「ふおぉ・・・砂浜、じゃなくて小石なんデスね。」 のだめが物珍しそうにビーチを眺める。 ・・・・・・疲れた。 今日の移動距離は半端じゃない。 パリからコート・ダ・ジュール空港まで1時間。 少々リッチな遠出になった。 「そだ、お弁当食べまショ~!!」 途中買ったビニールシートを敷いて、並んで座る。 「はぁ~・・・・もうそろそろ夕暮れですね。」 「そりゃそうだろ。お前、出かけたいって言い出したの何時だ?」 「それは・・・・でも、のだめ朝寝坊だったし。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 海の音だけが聞こえる。 沈黙が二人を飲み込む。 こいつなりに、気が滅入ってるんだよな。 本番まで後4日。 リハーサルはゲネプロ合わせて後2回だけとなった。 地中海に沈む夕日が、のだめの瞳を紅く照らす。 「・・・・・・・・真一くん。」 のだめが口を開く。 「もし・・・・・のだめがもうピアノを弾かないと言ったら、のだめはのだめじゃなくなりマスか?」 唐突な質問に、千秋は返す言葉を必死に探す。 「・・・・・・・冗談デス!!今のは無かったことにしてくだサイ。」 無かったことに出来るはずがない。 「最近、ピアノがあまりにものだめの心を映すから、少し怖くなっただけデス。」 「心・・・・・・」 千秋は考え込む。 その間にも、夕日はどんどん海に飲まれていく。 「良いんデス。この不安は、本番に晴らします。」 「・・・・・・・・・。」 これは、のだめの問題なのか。 俺とのだめの問題なのか。 考えは四方八方を飛んで、空回るだけだった。 「とにかく、今夜はどこか泊まって、明日パリに戻ろう。」 「むきゃ~っ♪真一くん、今日はなんだか太っ腹ですネ?」 「俺は、いつも気前いいよ。」 二人は夜の闇に連れ去られてしまわないように、その手を握り合った。 ******************************************************** 朝に飲んだ紅茶は、すごく甘い、いいにおい。 でも時々、ちょっぴり苦い。 のだめは部屋の壁一面に広がる窓から、空を見上げていた。 少し窓を開けてみると、海のにおいがした。 千秋はまだ寝ている。 丸まってシーツをぐしゃぐしゃにしているその姿が愛しくて、のだめはいつも癒されている。 「きっと、大丈夫デス。」 聞こえないような小さな声で、ニースの空に向かって呟いた。 fine ******************************************************** 終わりました。 こんなんで、良いのでしょうか? 一応、「カナリア」「アネモネ」「シナモン」の3話は、のだめを中心に書いています。 なんだか、私が書くのだめはテンション低い気が・・・・・・・・・・・・。 ゴールデン・ペア、早く見たいような、まだ取っておきたいような。 それでは、3話読んでくださった方、この話だけ読んでくださった方、皆々様。 感想などございましたらご気軽に! それでは。 Ricco
by poppo1120
| 2006-02-11 23:30
| SS連載
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