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infection~微熱がある夜は~

千秋王子、ご生誕記念に。(フライング)

しかし王子、本誌では未だバカンス中なので、本当に年取るのはあと半年以上先ですかね??



最近kissの発売日が近くなると、ドキドキしすぎるのは更年期障害でしょうか?




それでは、「infection~微熱がある夜は~」
どぞっ↓




コンダクターの醍醐味。




観客席よりもさらに前の特等席で、オケの演奏を聞ける特別な存在。


オケの音色に包まれると、そのまま自分もその音に溶けてしまいたいと思う。




しかし、

この皮膚が、肉が、骨が、溶け合うのに邪魔をする。


いっそ、この体も音楽と1つになってしまえれば。





この感覚。





音楽に抱かれる興奮と、性感帯は隣同士にあるのかと感じることがある。

いや、そこに隔たりは無く、
むしろ、一部は混じっているのか。



優しくて、激しい

甘くて、辛い

嬉しくて、哀しい

近づいたり、離れたり

・・・愛しいこの感覚。






音は、何かと似ている。



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1つの大きな舞台を終えるたび、千秋は歩くのも億劫になるほど、身体も、精神も疲れる。

自分にある力をすべて使い切る。

というよりは、演奏する曲の数だけ千秋はオケの音に身を預け、心を委ね、すべてが終わる頃にはただ興奮しか残らないに過ぎない。


たくさんの花束は全て事務所に預け、時計をちらりと覗く。



シャワーを浴びたい。

が、今日はそんな体力すら無い。



足早にホールを出て、タクシーを止める。







「サンジェルマン・デ・プレまで。」







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アパルトマンは静まりかえっている。


このあたりは、深夜になるとほとんど都会らしい活気もあったものではない。
住人たちが夢路につく頃には、少しの街路灯を頼りにアパルトマンの門を探す。


AM;0:23



自分の部屋に明かりが灯っているのに気づくと、なぜが1日の疲れも少しは和らぐ。




「ただいま・・・・・・・」

「お帰りなさい・・・ムフッ♪」


のだめはまだパジャマに着換えていない。
いつもならこの時間、うたた寝しているか、お風呂に入っているかである。

コンセルヴァトワールの学生の朝は早い。


「・・・・・・」

「ナニ、不思議そうな顔してるンデスか??」

「何って、今日なんかあんの?」



不思議だから、不思議そうな顔しているに決まっている。




「さぁさ、真一くん。早くっ!!!!」

ベッドルームを抜けてダイニングへ入ると、いつも殺風景な空間が華やいで見える。



魚のカネロニに、パルマ産生ハムのピッツァ。

ボンゴレ・ロッソに、牛肉のカルパッチョ。

・・・・それと、買った覚えの無い赤ワイン。



「おたんじょうび、おめでとございマス!!」

のだめは嬉しそうに笑った。








「俺、腹減ってない。」

そう、ぶっきらぼうに答える。




ぷぎゃーっ!!!!せっかく用意したのに!!!!


と、怒られるだろうなとのだめの顔を覗くと




「・・・・・・そデスか。今日は疲れてて当然ですよね。とにかく座るだけ座ってくだサイ♪」

そう言って千秋のコートと上着を預かると、そそくさとクローゼットに向かった。









誕生日。

忘れてた。祝ってくれる気はあったんだな。


ちゃんと準備されていると、なんだか照れくさいというより気を使わせたかな、と思う。

それよりも、本当に食欲が無い。







「・・・・・・悪い。明日食べるから。」

「いいんデス!!本当はアパルトマンの皆で祝いたかったんですけど、真一くん今日は帰りが遅いかと思って料理だけ手伝ってもらいました!」





食卓をじっと眺める。






誕生日なんて、三善家で祝ってもらって以来だ。

それも、もう何年前のことだか思い出せない。





「カルパッチョ・・・・・・お前が作っただろ。」

「むっ!!?誰が、・・・ど、どれを作ったかはトップ・シークレットです!!」


隠す必要性がどこにあるのか。


「肉、厚すぎるし。半生のステーキみたくなってる。」

「まま、そう言わずに・・・そ、プレゼント!プレゼントがありマス!!!」


のだめは、彩り豊かな料理たちに適当にアルミホイルを被せる。






プレゼント。






一瞬、またプリごろ太だったらどうしよう、と本気で思う。

一応、恋人だしそれはないと自分に言い聞かせたりして。



「ハイ、開けてみてくださいっ。」

のだめに渡されたのは小さな封筒。



"真一くんへ"



千秋は封筒を受け取ると、丁寧に封を開けてみる。










『肩叩き券』


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


千秋は、そっとその紙切れを封筒に押し戻そうと試みる。






「ちょ、ちょちょとっっ!!!!真一くん!!?」

「申し訳ないが・・・・・まだ、そういう歳ではないので。」



「ぼへっ!!ま、と、とにかく最後まで見てください。」

焦ったのだめが、今度は封筒を千秋の手から取り上げて、中身を取り出す。



『ターニャのお土産をもらえる券』

『ユンロンと割り勘できる券』

『ギャRuiと買い物できる券』


まだある。


『アンナの武勇伝を聞ける券』

『ムッシュ長田のジャンプ券』

『黒木君と武士券』

こうなると訳が分からないし、しまいには


『マツケン』





ネタ切れか?

千秋は冷静に考えるが、最後に1枚


『だめ券』


を手に取る。




「これは?」

「ふふ、それは最後の切り札ですから大事に取っておかなくちゃデスよ!!」

「で、使い方は?」

「真一くんがピンチの時、妻が助けに駆けつけてくれる優れモノでですね・・・」



のだめの話を聞いてるのか聞いてないのか、千秋はおもむろに

「じゃ、これ。」

と、のだめの話を遮るように『だめ券』を渡す。



「最後の切り札って説明しましたけど??」

「俺、今ピンチだから。」

「何がデスか?」

「ま、とにかく、いいから・・・・・」


「まったく、しょーがないですね・・・・・」

のだめはため息と共に呟くと、






真一くん、好きですヨ。







と、耳元で囁く。




「・・・それで?」

「へっ?!まだですか?意外と欲張りですねぇ~。」


こんどは真一の目の前に立つと、のだめは自分の頬をぽりぽりと引っ掻きながら








・・・・・・・愛してます。世界で一番。






と恥ずかしそうに言う。


「うん。あとは?」

「ええぇっ!!!!?これ以上妻としてスペシャルな隠しだまは無いンですが・・・」



のだめがう~ん、う~んと腕を組んで考えること数十秒。









くびれの無い腰に両手を回し、ぎゅっときつく締めると




「やっぱ、もういい。」




と千秋は言う。



・・・・・うろたえるのだめに構わず、ふと、思い出す。










この感覚。










溶け合いたい

混ざり合いたい

1つになりたい。









音は何かと似ている。













その何かが、分かった気がした。


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実際なら、千秋は25歳、のだめは24歳って段階ですかね?

Riccoは妄想は得意技ですが、自分が文章にすると陳腐なものになってしまう気がしてなかなかかけない話なども多々あります。


ふぃ~。



Ricco
by poppo1120 | 2006-02-07 16:15 | SS
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