デイドリームジェネレーション

*mp*あこさんへ、1万Hit記念に贈ります。





ピーターパン・シンドロームをご存知でしょうか?




いつまでもオトナになれない、なりたくない、そんなオトナへの猶予期間から抜け出せずにいる人たち。


淡い想いを思春期という宝箱に閉じ込めて、青年期を行く。



そして、いつかオトナと呼ばれる種族に仲間入りをして、シャカイジンだとか、セキニンだとか、ケッコンだとかネンキンだとか、とにかく煩わしいものにまみれて生きていかなければならなくなるのです。




『いま以上』が欲しいと思うけれど、『不確実な明日』よりも『確実な今日』を生きたいとも思う。




それは我儘すぎるでしょうか?








"ちょっと待てって言ってるじゃねーか!!"

"なんデスか?"

"そんなに一人で飛ばしたら連弾になんねーだろ。"

"そんなこと言われたって・・・・・・"

"・・・・・・・発表会、今週の日曜日だぜ。"

"・・・・・・・・・・・。"

"合わせる気がないならペア解消する?俺からリカちゃん先生に言っておくけど。"

"それは、いやデス。"

"じゃ、ちゃんと俺の音も聴けよ。"






「わかってます・・・・・・・しん・・・・・い・・・ちくん」



こいつ、なんの夢見てるんだ?

寝言に答えると・・・・・なんだっけ?不吉か何かだったか?




AM2:56




R☆Sオケのリハが長引いてようやくマンションへ戻った。


真一は布団に包まってみの虫みたいになっているのだめの隣に腰掛けて、寝顔を眺めていた。




安らかな・・・・・・・・・・・いや、そうでもない。


眉間に皺を寄せて苦悶の面持ちで寝ているから、心配というか不思議でたまらなかった。



よりによって、妙な夢まで見やがって。


そんな辛そうな表情で、変な寝言言うなよ。




責任感じる?




一体何の責任だ。




そんな顔すんなって。







「おまえ、昨日なんの夢見てたんだよ?」


真一がぐるぐるとかき回す鍋の中身は、トマト色だった。



「夢?のだめ、夢なんて見ましたかネ・・・・・」


聞くだけ無駄だったとため息を飲み込んで、テーブルにスープ皿を2枚と、焼きたてのバケットを並べる。



バターナイフにたっぷりバターを乗せた手を止めて、のだめが言う。




「そういえばというか・・・・・・・・なんだか懐かしい夢を見た気が。」


「へー。」


なんだか、もうこの話はいいや。


なんとなく、そう思った。



「っていうかお前さ、勝手に人の部屋で寝たり、当たり前に朝飯食ったり・・・・」


「はい?」


「もうやめれば?」


「迷惑ですか?」



迷惑というより・・・・・・・・・・・


おかしいだろ、だって。



はぁ・・・・・・・。



睡眠不足の脳細胞で一生懸命考えたって、どうせろくな答えも出ない。




「俺、先学校行くから。」


「えぇ~?一緒に行きましょうヨ。」


「やだ。」








****************************************





大学のレッスン室。



グランドピアノが2台だけぽつんと並ぶ以外、目立つものもない。


でも一度鍵盤を弾けば、色とりどりの音符が放たれては壁に跳ね返って密室をきらきらと満たす。



狭い部屋に360度、音のパノラマ。



「なんや、今日は早いな。」


江藤はギーっとピアノ椅子を引いて座った。



「《くるみ割り人形》か。連弾用の楽譜やないか。」


「連弾?どうりで・・・・・・・」



のだめは今、何故この曲を弾いているのか自分でも分からなかった。


弾いてみたけど、なんだか不完全で腑に落ちないメロディーに疑問符が浮かんでいた。




「昔、弾いたことがあるような気がするんデスが、誰と弾いたんでしたっけ?」


「阿呆か。俺に聞くな。」



懐かしい、淡い、切ない記憶。


ずっとずっと前に胸にしまった大切なカケラ。





人は、いつの間にこんなに大事な思い出を閉じ込めて、そしていつか忘れてしまうのでしょう。



忘れたくないから、失くしたくないから大切に大切にするのに、


そんな願いさえ過去に置き去りにして。



オトナになんて、なりたくない。




そう願ったのはいつの日か・・・・・・・・




気づかぬうちに月日を重ね、儚い想いを糧にして、



僕らはコドモからオトナへの橋を駆け抜けるのです。






色褪せない想いを飛び越えて。






***********************************






「先輩、一緒に弾きませんか?」


「学校でも散々弾いてきたんだろ?何弾くつもりなんだ?」



真一の部屋にあるピアノは、奏でるとなんだか真一のように優しい音がするからのだめは好きだった。



「これデス。」


のだめの指が踊ると、音符の一つ一つに魂が灯る。



「《こんぺいとうの踊り》・・・チャイコフスキーか。俺はセカンド弾けばいいんだな?」


並ぶ二つの背中、ぶつかる肩が熱を帯びる。




鍵盤の上で会話する二人の手のひら。




すると、突然のだめの手がピタッと止まる。




「あっ!!」


「なんだよ。」


「思い出しました。しんいちくん!!」


「は?なに?」


「違くって!!!のだめの・・・・・・・・・」


「おまえの?」





初恋の人。





「へへっ、やっぱりなんでもありません。」


「何だよ?!気持ち悪い。」


「そうかそうか・・・・・・ふふっ。」




真一はにやける隣人に呆気に取られる。



「大好きですヨ。」


「誰に言ってんの?」



真面目で、ぶっきらぼうで、少し冷たいけどその分ときどき優しい。


音楽が好きで、音楽からも愛されて。




何より、自分のピアノと自分自身を信じてくれた。




「先輩も、ですけど。」


「も?他に誰がいるんだよ。」


「あれ?ヤキモチですか?大人気ない。」


「だーっ!!!!っざけんな。意味わかんねー。」










"発表会、終わっちゃったな。"

"そうですネ。"

"・・・・・・・・・・・・・・・・。"

"あ、しんいちくん。今『淋しい』って思ったでしょ?"

"思ってねー!!"

"ぷぷっ。素直じゃないですね~"

"ほっとけ。"







過ぎ去りし風は、もう帰っては来ないし、




通り過ぎた雨は、もう空へは戻らないのです。





帰れないから、戻れないから尚更恋しい。



それが過去。




しかし、忘却は消滅と同意義だとは思いません。




『今』はすべて『過去』からできているのだから。






オトナになんて、ならなくていい。



そう思ってみてもいいでしょうか?





そんなカテゴリーはいらない。




新しい『自分』というカテゴリーで生きていきたい。





オトナにならないピーターパン。








きっと、あなたの心にも住んでいるでしょう。





                                         fine


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んわぁあああ~あこさん、ごめんなさい(;_;)

まったくリクエストを伺った意味がなくなってしまいそうです。ちなみに、しんいちくんは架空の人物です。(お気づきでしょうが念のために)

ぐふっ・・・・・・・・・・・遅れましたが、1万打ほんとうにおめでとうございました!


そして、これからも大活躍期待しています!!ラブ♪

Ricco
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by poppo1120 | 2006-04-28 21:46 | 捧げものSS
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