Don't make me blue.

久々に単発SSです。

"微妙にファンタジー"がいつのまにかコンセプトになった当blogにピッタリな出来栄え?(ほんとかよ・・・)

それでは、「Don't make me blue.」をご覧ください。





この世には理論や知識じゃ解明できない不可思議な現象が多すぎる。


例えば超能力だとかUFOだとか、

とにかく自分の中でカテゴリー化された常識の枠組みには到底収まりきれない

説明も理解も不可能なありとあらゆる事柄に悩み、疲れ果てる。



でも、それでも信じてみたくなる。



たとえタイムマシーンが発明されないまま地球が滅ぶ日が来ても、

時計の針は壊れずに確かに動いていて、

1秒でも先には未来の自分がそこに存在しているということを。







シテ島とサン・ルイ島を結ぶサン・ルイ橋に佇めば、濁ったセーヌ河と島々との風景がなんともいえないバランスで調和されていて感心する。

見上げればサン・ジャック塔、見下ろせばセーヌ河を移動する運搬船が見える。



今日もパリは晴れていた。




「そう、チアキ演奏旅行に行ってるのね。」

ターニャはラベンダー色のマーメイドスカートをひらひらさせながら歩く。

「そうなんですヨ。1度ミルヒーについていっちゃうと帰りも遅いんです。」

のだめはどこか遠くの景色に視線を向けながら答えた。

「・・・・・・・ミルヒー?」

絶対偽名だよな、と二人の後ろを歩くフランクがのだめの話を疑ったが、確かめるのはやめた。

そのかわりに

「・・・それってチアキの師匠でしょ?本名は?」

と、ターニャが突っ込む。

「・・・・・・・ミルヒーは、ミルヒーですよ。いずれ分かりマス!」

ミルヒーの本名ってなんだったっけ・・・とのだめは真剣に考えたが、思い出せなかった。



パリへ来て2年目の秋。


新学期が始まるとほぼ同時に、真一はシュトレーゼマンと演奏旅行へ旅立ってしまった。

マルレのオーディションも一段落し、次の仕事も真一にとって大切なものであることには間違いないが、あの広い部屋で一人留守番しなければならないのだめは淋しかった。



真一君、今何をしていマスか?


何を考えていますか?



雲ひとつ無いセルリアンブルーの空を見上げて、真一を想う。

パリの空はいつでも私を励ましてくれる。

そんな気がする。


次再会できるのは、またノエルの季節だろうか・・・・・・





「ねぇ、ちょっと!あれ!」

思いに耽っているとターニャが橋の上から河を指差す。

「ビン?透明の・・・中に何か入ってるよ。」

フランクもターニャの隣に駆けつけて、セーヌ河に漂う一つの物体を見つけた。

「お宝ですかネ?!追いかけましょう!!」

「え?追いかけるって・・・・のだめ!!待ちなさいよ!」


のだめは仰天する二人を置き去りにして風を切るように走り出す。


「河瀬に降りるの?!危ないよ!!」

フランクの叫びはのだめに届いたのか届かなかったのか、今となっては分からない。




はぁ、はぁ・・・・・・・


昨日は雨が降ったせいだろうか、河の流れは思ったよりも速くて、透明なビンは下流に向かってどんどん流される。

追いかけるのだめも必死だが、そののだめをさらに追うターニャとフランクはさらに災難だった。


ようやく追いついて、のだめは河に向かって思いっきり手を伸ばす。




その手が掴むのは、希望か絶望か。




「届きましたヨ!!・・・・・・っと、お、おぉっ!?」

届いたのは良いが、のだめの態勢は河瀬から足が離れかけて今にも崩れそうだった。



ガシッッ!!!!



のだめのワンピースをしかと掴んで引き戻したのは、紛れも無く親友たちの手だ。


「お、お気に入りのワンピが~」

掴まれた拍子に背部の生地が伸びきっている。

「文句言わないのっ!!」

「そうだよ。河に落ちるとこだったんだよ?」

親友たちは呆れ顔で大きくため息をついたが、のだめが助かったのでひとまず安心した。



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 俺は何故、今こんなとこへ居る?

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不思議な宝物を拾ってしまった。


拾ったビンは河の水で汚れたのか少しくすんで見えた。

中に入っていたのは一通の手紙、もちろん、3人は迷わず開いてみた。


「手紙・・・・・・・・」

「"何故こんなとこへ居る?"って、記憶喪失の人でも書いた手紙かなぁ?」

「ピアノマンかしら?」

「なんデスか?"ピアノマン"って。」

「あんた知らないの?」


宛先の書かれていない手紙。

なんの魅力もないただの紙切れを拾ったのだめの心情は複雑だったが、それでもその"宝物"らしきものに妙に興味が湧いた。


観光地の風景の中に、子どものようにしゃがみこむ大人三人の姿は滑稽にも見えるが、本人達はまったく気にも留めない。



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ペンを持ったのはいいけど、あまり意味はなさそうだ。

ただ・・・・・・・落ち着かなくて。

とうとうこの日が来てしまったから。

・・・いや、待ちわびていたはずなんだ、きっと。


なんというか、そうだな。

大事な何かを本当に大事にしようとすると、

意外とそれが難しかったりして、

どうでもいいことばかりうるさく言って

迷ったり焦ったりどうしようもなくさせる。

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「あ、なんか曇ってきたんじゃない?」


フランクが空を見上げて言った。

確かにひんやりとした風が吹いてきて、空はグレーに染まる。


そもそも、今日は何で三人で出かけていたのかというとただの気分転換であって、他に目的は無い風を装っていた。

が、じつは真一が旅立って一人きりになったのだめを少しでも元気付けようというターニャの提案だったことは本人には秘密である。


雨が降ってびしょ濡れになっては、せっかくのプランも台無しだから本当は早く帰りたい。


しかし、肝心ののだめが手紙に釘付けで微動だにしなさそうなのを見て、フランクは言葉を飲み込んだ。


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傷つけてばかりきたけど、傷つけずには大切にできなくて

それって矛盾してると思うけど他に方法が無かったんだ。


それでも、今日こうしてここに座っているということは、

単純に時の流れに身を任せたせいじゃなくて

自分で決めたことなんだと自分を納得させようとしてる俺が居る。

世の中説明できないような不可解な出来事なんて溢れているから、

今日のこれもまた、そんなものたちの一部なのかもしれない。

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「なにかしら、この手紙・・・・・・・・本当に。」

「のだめにもさっぱり・・・」

「なんかこれ書いた人、悶々としてる感じが・・・・・」

「確かにそうですネ。」

「ねぇ、これラブレターじゃない?」

「え?!」


手紙の内容だけ見ると、趣旨も目的もはっきりしない代物である。

しかし、なにがしかの大切な思いが詰め込まれている、そんな雰囲気は感じ取れた。


「っていうかこれ、読んで良かったのかな?僕たち。」


フランクがぼそっと言うものだから、二人は一瞬沈黙した。

良かったも何も、河になんて流した人が悪い気がすると思いながら。



そんなやりとりをしている矢先に


ビュッ!!!!


っと強い風が吹いて、のだめの手から読み終えたページの一枚がさっきまで渡ろうとしていた橋の方角へ飛ばされた。


「ちょ、ちょ・・・と!待ってくだサイ!!」

のだめは再び絶叫しながら風に運ばれる紙切れを追って走り出した。


「のだめ・・・・・・さっきから走ってばっかり。大丈夫かな?」

「平気でしょ。それより、今のうち最後まで読んじゃいましょうよ。」


いつのまにかターニャも手紙の世界へ引き込まれているかのように、夢中で読んでいた。


女って・・・・・・・すごい。

とフランクは内心、恐々としていた。

しかし、そのフランクでさえこの手紙に何かの縁というか、妙に好奇心をそそられていた。




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えー・・・・・・と。

あ、そろそろ式が始まる時間だな。

・・・・・・・無駄に緊張してきた。

あいつを迎えにいかなきゃいけない。


パリへ来て3年間、怒涛のように過ぎていったけど

これからの一分一秒も俺たちにとって重要な、

明日へのきっかけになればいいと思う。


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「タ、ターニャ。これって・・・・・・」

「マリッジ・ブルーってやつかしら?」


いや、まぁ、おそらくそうだと思うけど。


「結婚式前に怖気づくなんて、これ書いた人間は相当ヘタレてるわ。」

「はは・・・・何それ?っていうか、本当に雨降りそう。」


今にも降り出しそうな雨の気配に焦っていると、上流の方角からのだめが戻ってきた。


「はぁ、はぁ・・・・・・ふぅ。なんとか取り戻しまシタ!!」

しっかりとのだめの右手に握り締められている"宝物"の姿を確認して、ターニャとフランクは安堵した。


「雨降ったら大変だよ。帰ろう!!」

「そうね。」

「そうデスね。」

「これ、どうする?」

「持って帰ってもしょうがないし、流した人は流したかったわけだから河に戻そうよ。」

「キャッチ&リリースですネ?」


単語の使い方が違うと思うが、急いで帰らないといけないから誰も突っ込まなかった。


大慌てで手紙を丸めてビンの中へ詰め込んだ。

最後にコルクをビンの口に押し込んで、三人で再びセーヌ河へ流した。


「さよならデス。」

「また誰かに拾われたりして?」

「ふふっ。まぁその時はその時じゃない。」

「さ、帰ろうか。」

「のだめ、あんた今晩夕食係よ!」

「そんな当番、今初めて聞きましたヨ!!っていうか、のだめ手紙の続き読んでません。」

「気にするほどのこと書いてなかったわよ。」

「そんなぁ~仕方ないですケド。」

「ははは。きっと手紙の最後はハッピーエンドだよ。」

「そうですかね?」











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これ、書いたのはいいけどどうする?

まぁ、河にでも流すか。

案外、知り合いが拾ったりして。

それだけは勘弁だけど。


さてと。

この扉を開けたら待ってんだろうな。

早く行かないと。

もうずいぶん待たせたし。

じゃ、またな。

過去の俺。

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その後手紙の行方は、誰も知らない。






                                fine
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時間の流れが分かりにくいぞ、こりゃ。
でもこんなん書くの大好きかもしれません。

Ricco
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by poppo1120 | 2006-04-08 19:12 | SS
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