Sympathy<後編>

Sympathy<後編>です。


あり?まとまんなくなっちった・・・






真一が手ぶらで家路についた頃、空腹に耐えられなくなったのだめはサンジェルマンの商店街に赴いていた。



ヨーロッパの野菜は、日本の野菜のイメージが染み付いているととんでもない形に見える。


やたら大きかったり、色が違ったり、予想外の形をしていたり・・・



土や水や気候が変わると生物も環境に対応して様々に変化する。




人もまた、然り。






パプリカ、オニオン、ズッキーニ・・・


トマトは、いらない。





プリごろ太、ごろ太・・・・・・



どうしてお腹が空いていると無駄な食料までカゴに詰め込んでしまうのか。

いや、決して無駄じゃないと自分に言い聞かせながら。



今夜のメニューは決まってもいないし、肝心の料理長はいつ帰ってくるか分からない。




買い物袋がパンパンで、腕がしびれる。





今日は風が強くて、追い風に向かって歩くのは堪える。



のだめの嗅覚が、春の訪れをとらえた。



「はう・・・・・・・春の匂い。」



買い物袋を両手にぶら提げて、うろうろと商店街を歩き回る。






匂いの主を追うのに必死になっていると、いつの間にか一人の女性に道をふさがれていることに気づいて、はっとする。



覆面めいたものを被って、でもかすかに漂わせる雰囲気から女の色気と不可思議な存在感を感じさせる。






『最近タロットにハマって。』



ターニャのさりげない一言を思い出し、のだめの直感が働く。





「あ、あなたが占い師ですネ?」



覆面の女は無言で背を向け、《ついて来い》と言わんばかりに路地裏に向かって歩き始めた。







小さな机と2脚の椅子だけが地味に並べられ、のだめは女と向かい合って座った。


荷物が重くて途方に暮れていたところだったから、小休止はちょうど良い。






「21までの数字から好きな数字を一つ選んでちょうだい。」


「えと、うーん・・・1にしマス。あ、これは無料ですか?」



占い云々よりもペイの方が気になるのは性分だから仕方なかった。



「あなた、面白そうだから今日はタダでいいわ。」





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   女帝
The Empress
    逆
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「あなた、今恋してるでしょ?」


「え?あ、ハイッ!!そうですけど、それがなにか?」


「このカードを見て御覧なさい。あなたの彼、今は注意力散漫で何をするにも時間がかかるわ。」


「はぁ・・・・・・・散漫・・・・・。」


「焦りは禁物ね。辛くて苦しい時期は続くけど、必ず未来に繋がる苦労だと思って受け入れることが大切よ。」







未来・・・・・・。



その姿かたちさえ知らない存在を、頭に描いてみる。







「のだめは・・・・・・その未来にいるでしょうか。」


「・・・不安なの?」


「不安・・・なんでしょうかネ?繋がっているようで、繋がっていない・・・・真一君との行き先は。そんな気がしマス。」



占いを信じる、信じないは関係ないのかもしれない。


けど、無意識にこぼれる不安の一つ一つが自分にとっても未来への不確定要素として立ちふさがる。





占い師はのだめの言葉に耳を傾けながら、散らばったカードを丁寧に集め始めた。





「何も難しいことなんてないわ。」


「・・・え?」


「彼があなたに望むことと、あなたが彼に望むこと。きっと重なるところに明日への扉はある。」





初めて会ったのに、何もかも見透かして・・・そう、心の闇まで。


占い師なんだから当たり前?




ターニャは何を占ってもらったんだろう。





自分でも漠然としてはっきりとしない不安や迷いが、他人に知られてしまうのは恥ずかしくて複雑。


でも、知られて少し荷が軽くなるような気がしている。




誰にも知られたくない、でも知って欲しい。







人は誰でも、そんな自分の闇を払ってくれる人を待っているのかもしれない。







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「真一君。」


「ん?」


「運命って信じますか?」


「そういうおまえはどうなんだよ。」





ベッドで寝転ぶ真一は、ドライヤーの温風で髪をなびかせるのだめの後姿に視線をやった。



シャンプーの匂いと女性が持つ特有の匂いが混ざって、真一の好きな匂いになる。






ドライヤーのスイッチを切ってスリッパを脱ぎ捨てたのだめが、真一の隣にダイブする。




あ、またいい匂いがした。






「むーん・・・運命という言葉があるんだから、存在してもおかしくないんじゃないですかネ?」


「やけに抽象的な答えだな。」





定められた未来など、誰が望むだろうか。




第一、どこの、誰とも知れない外力に誘導される人生があってなるものか。




それでも、引力のように互いに引き寄せられる力が存在する。







宇宙の法則。





逆らえない、抗えない、


戻れない、避けられない、


逃れられない。






運命は悪戯、と初めに言ったのは誰だろう。





出会うべき相手と出会うことは避けられないが、


愛すべき相手と愛し合えないこともある。





運命という名の矛盾と葛藤、欲望と焦燥に悶えて。






流されるのもいいだろう。


ただし、流されてはいけない時もある。






運命の存在を信じても、疑っても、否定しても。





今までそれなりに恋愛もした。


それでも、運命を感じたことは無かった。





運命を知らなかった。


運命なんてものと出会っていなかったから。







「まあ、でも今なら少しは感じるか。」


「へ?」


「なんでもない。早く寝ろ。明日も早いんだろ?」




せっかくブローしたてののだめの髪をくしゃくしゃにして、寝たふりをしてみせる。



文句を飲み込んでそっぽを向くのだめの後姿に、運命の糸が絡まっていないか確かめてみた。





この目には映らないが、後ろから抱きしめたらしかと感じる手応えに安堵しながら夢路へと旅立つ。











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   魔術師
The Magician
     逆
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《お互いの影響力が悪い方にでています。付き合い方を考えなおすべきかもしれません。》






「なに、これ?」


ターニャが急用だというから、慌てて訪ねてきたのは良いけど。




「・・・・・・・・・チアキとのだめの相性。占ってみたんだけど。」



訪ねていったら煎茶を用意してくれたターニャに少し好感が持てたばかりなのに、まさかタロットに付き合わされるために呼ばれたのかと思うとちょっとがっかりする。




「まあ、占いの結果なんて参考程度に考えればいいし。」


「ヤス、それはのだめたちに対するフォローなの?それとも、私のタロットの腕前を疑ってるの?」



鬼のような形相で問いかけるから、僕じゃなくても誰でもひるむと思う。




「・・・・・・・・そんなことより、君、自分のことでも占ったら?」


「自分のことはいいのよ。」


「へー。不思議なもんだね。普通人って自分の運命を知りたがるのに。」




そう、明日のことなんて誰にも知れないから知りたくなる。


知ってどうするのかは人それぞれだけど。





「自分の運命は知りたいけど、知りたくないの。」





そんなものなのかな?



どこか遠い目をするターニャの顔を見て、今日も化粧が濃いなと思う。






まあ、未来のことなんて、



未来になってみれば分かる。


                  




運命を信じるかどうかは、そのとき考えても遅くはないだろう。


                                  


                                       fine 
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終わりです。

運命論、私もあまり信じてはいませんが、自分の都合の良い時だけ信じたりします。

のだめが選んだ1は、「しんいち」の「いち=1」で。(再び強引)



良かったら感想や足跡など残していってくださいね~

Ricco
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by poppo1120 | 2006-03-21 10:04 | SS
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