ラヴコネクション

真一が何故社交ダンスを習い始めたのか、Riccoなりに想像(妄想)してみました。


ではでは、「ラヴコネクション」をどうぞ。




雨の日は嫌いだ。



生臭い匂い、


汚れる靴底、


濡れる肩先。



大量の湿気を吸収して爆発寸前の髪の毛をかきあげながら、真一は傘の大群の隙間をすり抜けて、足早に通り過ぎる。




雨の日になると、嫌でも思い出す幼い日の記憶。



大粒の雨でさえ、ほこりだらけでくすんだ過去を洗い流してはくれない。





こんな肌寒い日には誰か、温もりを分けてくれる人を待ってしまう。









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真兄へ

ご無沙汰してるけど、元気ですか?

三善のパーティー今年こそ来てくれるよね?

毎年招待状出しているのに来てくれない真兄にがっかりしている

由衣子の身にもなってよね。

新しいドレス買ったから、真兄にも絶対見て欲しい。

しばらく会わないうちに、私もオトナの女に成長しているんだから、

甘く見ていると痛い目みるわよ~!!


そうそう、もちろんのだめちゃんと一緒に来てね。

今回由衣子のお願いを聞いてくれなかったらどうなるか・・・

ふふふ。

それじゃ、楽しみにしてるね。

                              love.
                                  由衣子
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「ヨーコ!ヨーコに電話しなきゃ!!」



パーティーの招待状を見るなり、大慌てで大川の実家へ電話をかける。


もちろん、ドレスの催促のためである。




本当は行きたくない。




それが本音だが、由衣子の期待とのだめのはしゃぎように断るに断れなくなっていた。





「三善のパーティーなんて、関連企業のお偉いさんばっかりだし。」


「むん。心配ないですヨ。のだめはしゃなりしゃなりとしていますから!!」


「いや、そういう問題じゃなくて。」



そんな会話をやりとりしている間にも、叔父さんはホテルを予約してくれただろうかとか、何時に出発しようかとか、スーツケースは一つじゃ足りないだろうななんてことを考えていた。



心は拒絶しても、現実問題に頭が回って用意周到に対応してしまう自分に嫌気がさすことはよくあることだった。




もういい。


どうにでもなれ。




頬杖をつきながら、カーテンの隙間から機嫌の悪い空を見上げる。





今夜も雨が降るのだろうか…





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「え?父さんも来るの?!!」



三善グループの支店はオーストリア・ウィーンにある。


毎年開催されるパーティーに父さんが来たことはなかった。




父さんは、そう。


三善があまり好きじゃない。




そういうふうに見える。




「三善のサロンにもめったに顔を出さなかったのに。」



母さんが聞こえないようにぼそっ、と呟く。



年中演奏旅行で世界中を飛び回っている父さんにとって、親戚付き合いなんて所詮、茶番にすぎないのかもしれない。



「せっかくの親子水入らずなんだから、おめかししていかなくちゃね。」


そういって僕の襟元に蝶ネクタイをかける母さんの顔は、言葉とは裏腹に喜ばしげてはなかったように見えた。






この日、外は雨だった。




会場は豪華なシャンデリアと真っ赤なじゅうたんで彩られていたが、そのわざとらしい華々しさを装った姿に好感は持てなかった。



立食というより隅に酒のつまみ程度のものがテーブルに並べられ、自由に食べられた。


近くのボーイに声をかければ、好きなだけドリンクももらえた。





「真一。始まるわよ。」


「始まる?」



一瞬、何が起きるのかと緊張していたら、ストリングスのおじさん達が曲を奏で始めた。




1・2・3、1・2・3…




「三拍子…これ、ワルツだよね?でもこのテンポ…」


「これはウィンナ・ワルツなのよ。」


「この速さで踊れるの?」

「本来速いテンポのワルツがアメリカに渡ってゆったりとしたものになったそうよ。宮廷舞踊が盛んだった頃は、軽快なウィンナ・ワルツの方がウィーンで流行していたのよ。」



へー、そうなんだ。



と感心した風に答えつつ、来ているはずの父さんの所在のほうが気になってうわの空だった。





「真一も踊ってみる?」


「ぼっ、僕が?そんな、教わったこともないのに…」


「母さんが教えてあげるわよ。」



うろたえてしどろもどろになっているとこへ、





「スタンダードくらい踊れないと、笑われちゃうよ?」



と、ずっと探していた姿があった。





「えっ?え?!笑われるって…」



久しぶりに現れたと思えば突然そんなことを言うから、動揺するに決まっている。



腕を組んで考え込んでいるうちに、父さんは隣にいたはずの母さんの手を導いてダンスホールへ向かった。





踊る二人。




その姿は微笑ましく素敵に見えて良いはずだったが、二人はまるで寂しさや切なさを背負って踊っているようにも見えた。




あの時のワルツは、いったい何の曲だったのだろうか…






今はもう、思い出せない。






思い出せるのは、ただただ降り続く雨音だけだった。



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「真兄ちゃま!!」



駆け寄る由衣子はレースがフリフリのドレスで着飾り、頭にのせたシルバーのティアラはシャンデリアの輝きにも負けず劣らずきらきらと輝いていた。


「の、のだめもティアラしてくれば良かった~」

「頼むから、自分の年考えてから言ってくれ。」




パーティーはあの時と同じ会場だった。



ボーイにワインのおかわりを頼むのはもう何度目だろう。


ただでさえ時間をもてあましているのに、ゆったりと流れる時間に苛立ちさえ感じていた。





目のやり場に困ってグラスをじっと見つめて呆然としていたら、



「真一。探したわよ。」



なじみのある、懐かしくて温かい声にはっとする。


「・・・来てたんだ。」

「久々の再会に、そのセリフはないと思うけど。」



と征子がくすくすと笑った。


さすがにあの時よりは年をとったが、相変わらず若々しい母親が隣に立っている。





「ほら、始まるわ・・・・・・」




会場が照明が落ち、ダンスホールはスポットライトに照らされる。







流れる曲は三拍子を刻みながら軽快にメロディーを鳴らしているはずなのに、なぜか聴いていると周りの時間がゆっくり流れているように感じる。




ヨハン・シュトラウス2世《ウィーンの森の物語》




征子と二人でワルツを聴き入っていると、


緑のシルクのドレスを着た女性が、目の前の視界を遮ったことに気がつく。




スカート部分を両手で広げて、深々と礼をする。






「真一君。のだめと踊りませんか?」



「踊る?俺が、おまえと?!」





ダンスホールではすでに何組かの男女が踊っている。




「さあ、いってらっしゃい。」



そう耳元で囁くと、征子は驚いて硬直する真一の手から、半ば無理矢理ワイングラスを取って背中を押した。





差し出されるのだめの右手に誘われて、つんのめるようにホールへ飛び出した真一は、慌てて周りを見渡し必死に状況判断しようともがいていた。




「のだめが相手じゃ不満ですか?」



「・・・・・・お手柔らかに。」



こうなったら覚悟を決めなければいけないことだけは確かだと悟って、真一はのだめの腰を支えた。


いざ手を取り向き合うと気恥ずかしくて、なかなか視線が合わせられない。




それよりなにより、



こいつ、踊れるのか?






森の小鳥の声、木々の囁き。


美しいワルツが、二人の体に浸透する。




「ライズ・・・トゥ・・・・・・・」


のだめはぶつぶつと念仏を唱えている。



お世辞にも上手いとはいえない動きではあるが、この日のために練習してきたと言う雰囲気はうかがえた。




こいつ・・・・・・・・いつの間に。




真一のホールドはしっかりと固定されていて、しかしのだめが踊るのに窮屈にならない程度にうまく調整されている。


油断すれば、いつ体勢が崩れてしまってもおかしくない状況だった。




今話しかけたら、きっと止まってしまう。



真一はのだめに言いたいこと、聞きたいことが山ほどあったが止めた。





今はただ、ワルツにのって二人だけの空間、二人だけの世界が崩壊してしまわないように一つ一つのステップを慎重に、愛しむように踏んだ。







なんだろう。


この心地よさは・・・・・・・・・・







「ロアー・・・・・・・違う違う・・・・・」




ターン、


ウィング、


オープン・テレマーク、


シャッセ・・・






なんだ、もう曲は終わってしまうのか。


まだ終わるなって。



もうちょっとだけ。






繋いだ手を、離したくないから。







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「うきゃー・・・のだめ、傘持ってきていません。」



コンセルヴァトワールでのレッスンが終わり、リュカと校舎の玄関先で途方に暮れていた。



「こうなったら、走って帰るしか・・・・・・」

「ちょ、ちょっと!のだめ、この雨じゃびしょ濡れになっちゃう。」




空にも機嫌がある。


リュカも傘を持ってきていなかったが、迎えが来るから問題なかった。




泣き出した空を二人で見上げていると、霧の先に人影がぼやけて見えた。



「ほら、帰るぞ。」


「・・・へ?」



傘を持った男が手を差し出すと、のだめはおろおろとしながらもその温かい手のひらに自分の手をゆだねた。



「のだめ?!先に帰っちゃうの?」


「すみません~のだめにもお迎えが来たみたいなので!!」


ちぇっ、とリュカは可愛く舌打ちをしてみせたが、手を振って並んだ二人の背中を見送った。




踏み出す一歩一歩が湿った音を立てたが、なぜか真一は不快には感じなかった。




「真一君、どういう風の吹き回しですか?」


「なんだっていいだろ。」






こんな肌寒い日だから、誰かに温もりを分けてあげたい。




ただ、それだけのこと。





                               fine
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ダンス・・・・・・・・・・・難しすぎる~~~~~!!
助けてぇ~!!!しくしくしく・・・・・・・・


Ricco
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by poppo1120 | 2006-03-19 00:20 | SS
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